2021-11-24
傷あと
北海道産の大きな南瓜が、八百屋さんの店頭の段ボールに積まれてあった。とてもお安いので手に取ると、表面に薄茶色のボコボコとした小さなコブがいくつもある。お店の方が言うには、食感が悪いからそこだけ削れば、中身は大丈夫よ〜との事なので、それほど期待はせずに、でもひときわ実が大きく、コブはできるだけ少ないものを一つ、買ってみた。そして自宅で、南瓜の皮や色について調べてみたところ、このコブは「がんべ」と言い、皮にできたキズを自己修復したカサブタのようなもので、完熟している証しと書かれていた。傷が出来ると、南瓜が自分で治ろうとする力が働き、結果、ぎゅっと身がシマリ、美味しさが増すのだとか。野菜の生命力を感じつつ、人間も同じだなとしみじみ思う。辛い事を経験したり心に傷を負った人ほど、精神が強く人には優しかったりするもの。
2021-11-16
はじめて物語
この様なご時世とは言え、秋は何かを始めるに良い季節。語学を学んだり趣味を深めたり、新たにスポーツを始めた方もいらっしゃるのでは? 数年前のある秋晴れの日、友人のサーフショップへ行くと、始めてスクールに来た大学生らしき女の子が2人、インストラクターからウェットスーツを渡されていた。暫くして着替え終わり出てきたところ、1人の子にみんなの目が集中。何とウェットスーツを前後逆に着られていたのだ。そこでインストラクターである友人は、「多分ねぇ、ファスナーは後ろの方がボードに腹這いになった時、動きやすいと思うなぁ」と、なかなか紳士的に伝えていた。「何かを始める」と言うのは、こう言う段階から「お初」な訳で、ちょっと新鮮で何だか羨ましく、その場が温かな空気に包まれた。そしてその後、皆で「初チャレンジあるある笑い話し」で盛り上がった。
2021-11-05
地産名産
地元の名産、それも観光客の方々がお目当てにされる味は、そこに暮らす者として、なかなか買いづらくはないだろうか? 私の場合はシラスがそうで、釜揚げのパックを買ったり飲食店でシラスを使った料理を頼むと、観光客と思われやしないかと変な勘繰りが生じて、なかなか食べる機会がない。そのシラスの釜揚げを、先日5パックも頂いた。くださった方は鎌倉にお住まいで、いつも召し上がっているご近所の漁師さんのものかもしれない。パックを開けると、思ったより粒が大きく、白さも鮮やかで、海の香りが強い。ひと匙取って口に含んだ途端、噛みもしないうちから、塩気と甘さの絶妙に混じった旨味が広がって、思わずオイシー!と声をあげてしまった。こんなに湘南のシラスって美味しかったのかと、久々の地元の味に感激。また、軽く水洗いしてもべチャリとせずふっくらしたままで、これは脂ノリが良いと言うことなのだろうか? そして、土地の名産を味わえば、自然環境も伝わってくる。どうかいつまでもシラスが採れる、豊かな海であってと願う。