水を飲んでも尿が出ないときは、体内の水分不足もしくは病気の可能性があります

お水をたくさん飲んでいる気がするのになぜか尿が出ていない、いつもより尿が出ていない気がするなど、尿についてお悩みの方もいるかもしれません。尿の排出には、腎臓や膀胱などが関係しています。
また体内の水分量も尿の排出量に関係しているなど、尿が出ない場合にはさまざまな原因が考えられます。中には病気のために尿が出なくなるケースもあるので、注意が必要です。
気になる症状がどんな原因から生じるのか、改善方法にはどんなものがあるかについて紹介していきます。
目次
尿を排出するには「水分」が必要です
まずは尿が排出される仕組みについて確認していきます。尿はどうやって作られているのかが分かると、尿が出ない原因がどこにあるのか理解しやすくなるでしょう。
腎臓
体内を循環して、細胞から老廃物や毒素を回収してきた血液をろ過する働きがあるのが腎臓です。老廃物や毒素を取り除いた後の血液はまた体内を循環して、栄養素や老廃物を運ぶとされています。
血液中からろ過して取り除いた老廃物や毒素、余分な水分が尿の元(原尿)になります。原尿はほとんどが体内に再吸収されるので、実際に尿になるのはろ過された後の一部分しかありません。
腎臓には糸球体と糸球体を囲んでいるボーマン嚢、そして原尿の通る尿細管から作られる「ネフロン」が多数存在しています。このネフロンが腎臓で血液のろ過を行い、ろ過されたきれいな血液と原尿を作り出す働きをすると考えられています。
1日に腎臓がろ過する血液は150Lとドラム缶1本分の量があるとされていますが、そのうちのほとんどが再吸収されて尿にはなりません。
尿細管
尿細管とは、腎臓でろ過された原尿を再吸収する器官です。尿細管はネフロンから出て集まり、集合管になっていると考えられています。
原尿は尿細管を通る間にその99%が再吸収されるので、残り1%程度の老廃物や毒素、水分が原尿から尿になり、集合管、腎盂、尿道を通って膀胱まで運ばれます。
膀胱
腎臓から尿道を通ってきた尿を溜めておく器官が膀胱です。膀胱には約500mlの容量があるとされ、体内の老廃物や毒素を含んだ尿は膀胱から排泄されます。
健康な人は1日で約1~1.5Lの尿が出ると言われているため、尿が500ml以下しか出ない、2L以上の尿が出るなどの症状が出るときには、腎機能などに問題が起きているかもしれません。
正常に尿を出すために、1.5リットルの水分補給を目安にしましょう
単純に体内の水分量が少ない場合でも、尿量が少なくなる場合があります。正常な量の尿を出すためには、どれだけの水分補給を行うと良いのでしょう。
水分の役割
人間の体内は、成人で約60~65%が水分で構成されていると言われています。また、女性は男性よりも脂肪量が多いため、男性よりも体内の水分量が少ないという特徴があります。
水分が、体内では血液やリンパ液、細胞内液などさまざまな形となり、日常生活を送るために重要な役割を果たしているのです。
体内の水分量
人間の体内の水分量は、尿や呼吸、代謝などが原因で毎日2300ml以上排出されると言われています。この不足した水分を毎日補うことで、尿量が少ない状態が改善できるでしょう。
食事から摂取できる水分は1日に600ml程度とされているので、不足してしまう水分と食事から摂取できる水量から計算すると、1日の水分補給に必要な水分量は1500ml程と考えられます。
尿量が少ないときに生じる問題
尿量が少ないときには血液中の水分も不足するため、血液の循環が悪くなり代謝が下がりやすくなります。そのため、身体が疲れやすくなったりむくみが生じたりするかもしれません。
尿が少ないと余分なナトリウムが体内から排出されにくくなり、高血圧やむくみの原因になる場合もあります。尿量が少ないときにはさまざまな問題が起きる恐れがあるので、水分不足にならないように充分な注意が必要です。
脱水や熱中症のサインとして「尿の変化」があります

尿が出ないという症状が見られる場合には、もしかしたら脱水や熱中症になっている状態かもしれません。脱水や熱中症にかかっている場合には、体内の水分不足などが原因で尿が出なくなることもあるので注意が必要です。
脱水症
人間の体内の水分は尿や汗、代謝などのために毎日2300ml以上排出されると言われています。身体から失われた水分を食事や飲み物での水分補給などで補わないと、体内の水分量が不足して「脱水症」になるかもしれません。
脱水症になると体内の水分が不足して、血液量が減少、血圧の低下、栄養素や老廃物の運搬力が落ちるなどの代謝の悪化が見られます。血流の悪化による脳梗塞の恐れもあります。
高齢者は元々体内の水分量が少なく、自覚症状がないため脱水症になりやすいです。脱水がひどくなり熱中症にならないように、しっかりと脱水症対策を行ってください。
熱中症
熱中症は、気温が高い環境で過ごしていて体温調節ができなくなるなどの体調不良が生じる症状です。めまいがする、汗が止まらないなどの比較的軽度な症状に始まり、悪化すると吐き気や嘔吐、頭痛、また意識障害やけいれん、運動障害などの重い症状へと変わっていく場合もあります。
脱水症や熱中症の予防
脱水症や熱中症を予防するためには、失われた水分を補うために普段からこまめな水分補給を行いましょう。汗をかく前から少しずつ水分を摂取していると、脱水症の予防に役立ちます。
1日の水分補給量の目安は1500ml程と言われています。水分補給時には一度に大量のお水を飲むのではなく、効率よく身体に水分が吸収されるようにコップ1杯程のお水をこまめに摂取するように心がけてください。
大量に汗をかいた後などには、電解質も同時に補給できる経口補水液の摂取もおすすめです。
尿が出ないときには「病気」の可能性があります
体内が水分不足ではない状態でも尿の量が少ない場合には、腎機能の低下や前立腺肥大症、慢性腎臓病、神経因性膀胱といった病気の症状のためかもしれません。
尿が出ない場合に考えられる病気にはどんなものがあるか、病気の特徴ついて説明していきます。病気の場合は早めに病院で診察を受けて治療を行うことが大切です。
前立腺肥大症
前立腺肥大症とは、年齢が上がるとともに前立腺が大きくなる病気です。前立腺肥大症にかかると、前立腺が徐々に大きくなって尿道を圧迫し、尿が出にくくなります。
前立腺肥大症にかかっていても軽症の場合には、α遮断薬や抗男性ホルモン剤などの薬物療法で改善が見込めます。薬では改善できない重い症状には、尿道側の体内から前立腺を削り取る手術を行う場合もあるようです。
慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓で糸球体が障害を起こしたときに、腎臓内で血液のろ過ができなくなり老廃物などの排泄が上手くできなくなるなど、慢性的な腎臓病全般のことです。糖尿病や高血圧などの生活習慣病や、加齢などさまざまなことが原因で発症します。
末期の腎不全になると食欲が低下して尿量が少なくなるなどの症状が出て、状態によっては食事や薬物療法のほかに、透析や腎臓移植を行うことになるでしょう。
神経因性膀胱
神経性膀胱とは、膀胱の神経に障害が起きたために頻尿になったり、尿意が感じられず尿が出なくなったりする病気です。脳卒中や糖尿病、脊髄損傷、腰部脊椎管狭窄症、パーキンソン病などの病気により神経系に障害が発生した場合に発症すると言われています。
神経障害にはさまざまな原因があり原因の追及が難しい場合が多いですが、適切な治療が行われることで改善するでしょう。
(まとめ)水を飲んでも尿が出ないのはなぜ?
水を飲んでも尿が出ないときは、体内の水分不足もしくは病気の可能性があります
お水を飲んでも尿が出ない状態は、体内の水分量が不足している脱水症や熱中症にかかっているからかもしれません。脱水症などの恐れがある場合、水分不足で血流が悪化して脳梗塞などを起こす可能性があると言われています。
また、前立腺肥大症や慢性腎臓病、神経因性膀胱などの病気によって尿が出にくい状態になっている場合もあります。尿が出ない状態は身体に問題が起きている状態と言えるので、早めに水分補給を行ったり、病院に診察を受けに行ったりするといいでしょう。
<参考文献>
- 一般社団法人 日本腎臓学会「腎臓の構造と働き」
- 森下記念病院「腎臓ってどんな臓器?」
- 厚生労働省「「健康のため水を飲もう」推進運動」
- 平沢クリニック「「熱中症」と「脱水症」対策」
- 日本医師会「前立腺肥大症による症状」
- 兵庫医科大学「慢性腎臓病(CKD)」
- 名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室「神経因性膀胱」