体質や体調によっては下痢・腹痛を引き起こす可能性があるため、1日に200~400mlを目安に飲みましょう
「牛乳は健康に良い」と広く知られていますが、飲みすぎることで逆に健康へのデメリットを招く可能性もあります。特に年齢によってその影響は異なり、骨や腎臓、消化機能に関わるリスクが指摘されています。
本記事では、牛乳を飲みすぎることで体に与えるデメリットはあるのか解説します。また、適切な摂取量を知り、健康的な牛乳の取り入れ方を見直してみましょう。
牛乳の効果・効能とは

牛乳には多数の栄養素が含まれており、健康に良い飲み物だといえます。飲み過ぎなければ、以下のような効果効能が期待できるため、おすすめの飲み物のひとつです。
骨と歯の健康をサポート
牛乳には骨や歯の形成に必要な、カルシウム・ビタミンD・たんぱく質といった栄養素が含まれています。これら3つの栄養素の不足は、骨がスカスカになる骨粗鬆症との関係性がわかっており、骨や歯を強くしたいなら牛乳はおすすめの飲み物です。
「小児の骨折を防ぎ、50年後の骨粗鬆症を防ぐための追跡研究」では、1日にコップ1杯の牛乳を飲んでいる生徒は、2~3日に1杯飲む生徒と比べて、骨密度が高い傾向があると発表されました。「藤原京スタディ男性骨粗鬆症研究」では、1日2杯以上牛乳を飲む群は、骨密度が高という結果が得られています。
さらに、骨密度の高さは、たんぱく質の摂取量にも比例します。高齢女性3,656例を対象とした調査では、1日に800mg以上の動物性たんぱく質を摂取する群で、骨折リスクが低いことが発表されました。
また、ビタミンDの摂取量も骨折リスクに影響します。牛乳摂取の頻度が高いほど骨粗鬆症性骨折のリスクが低くなります。
筋肉の強化と回復
牛乳には、筋肉の成長や修復に必要となる、ホエイたんぱく質やカゼインが含まれています。そのため、アスリートやトレーニングを行う方が筋肉疲労を軽減する目的で、運動後に牛乳を飲むのがおすすめです。
筋肉をよく使う方や、筋肉を成長させたい方にプロテインは人気です。牛乳に含まれるホエイたんぱく質とカゼインもプロテインの一種であり、さらに消化しやすいため、運動後の筋肉ダメージを素早く修復するのに役立ちます。
牛乳は水分補給とたんぱく質摂取が同時にでき、アミノ酸スコアが高いため、運動後の飲み物として最適です。運動後に牛乳を飲むことで、筋肉痛の軽減や、筋機能の低下の予防にも役立ちます。
心血管の健康維持
牛乳100gを摂取すると、150 mgのカリウムを摂取できます。カリウムはナトリウムの排出を助けるミネラルのひとつです。
食事からのナトリウム摂取量が多いと、血圧が上がりやすくなり、心血管にダメージを及ぼす可能性があります。このようなリスクがある方は、毎日の食事で減塩に注意する方法でもナトリウムの摂取量を減らせますが、なかなかうまくいかないのが現状ではないでしょうか。
そのような場合に役立つのが、牛乳に含まれるカリウムでナトリウムの排出を促す対策です。WHOの基準では、1日に3,510mgのカリウム摂取が推奨されていますが、日本人は1日に約2,000mgしか摂取していないため、1日に数杯の牛乳を飲むことで摂取量を高められます。
リラックス効果
牛乳には、神経伝達物質であるセロトニンの生成を助けるトリプトファンが含まれています。セロトニンを生成するためには、トリプトファンとビタミンB6の摂取が必要です。
セロトニンはメンタルの調子を整える物質で、夜に牛乳を飲むとリラックス効果が期待できます。また、午前中にセロトニンが多く分泌されると、夜にはメラトニンの生成が促され、心地よい眠りをサポートするため、朝食に牛乳を取り入れる方法もおすすめです。
特に牛乳の摂取がおすすめなのは、月経前でイライラしやすいときです。月経前はセロトニンの分泌量が減りやすいため、積極的に牛乳を飲んでみましょう。
牛乳を飲みすぎるデメリット
牛乳は身体に良い栄養素が多数含まれていますが、飲み過ぎはよくありません。飲み過ぎると起こる可能性があるリスクを詳しく解説します。
お腹がゴロゴロする
乳糖不耐のある方が牛乳を飲み過ぎると、お腹がゴロゴロする可能性があります。日本人は比較的乳糖不耐の人が多く、特に高齢者は顕著に出やすいため注意が必要です。
お腹がゴロゴロするのは、牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)の消化不良が原因です。乳製品自体に影響を受けたのではなく、乳糖を分解するための酵素が少ないため影響を受けます。
乳糖不耐のある方が牛乳を飲むと、下痢・腹痛・腹部膨満が起こることがあります。ただし、牛乳アレルギーでも似たような症状が起こるため、注意してください。
乳糖不耐のある方が下痢を引き起こす量には、個人差があります。1日に牛乳3.5杯までなら下痢を起こさないという研究データがあるため、1日に1~2杯程度飲むくらいなら問題ない場合があります。
また、温めたり、ヨーグルトやチーズを摂取したりすると、下痢を起こしにくくなるのでおすすめです。
腎結石のリスク
牛乳を飲み過ぎると、カルシウム摂取が過剰になり、結石ができるリスクが高まる可能性があります。しかし、適度なカルシウム摂取は、結石の予防には有効です。
結石ができやすい体質の方でも、牛乳を過度に制限する必要はありません。具体的な摂取量については、医師に相談し決めると良いでしょう。
脂肪の過剰摂取
牛乳には飽和脂肪酸が含まれています。飽和脂肪酸の過剰摂取は血液中の悪玉コレステロールを増加させ、生活習慣病の原因ともいわれているため、牛乳の過剰摂取は避けましょう。
ただし、飽和脂肪分が多いからといって、低脂肪乳に変える必要はありません。なぜなら、低脂肪乳より全脂肪乳のほうがメタボ発症リスクを低下させるという研究データがあるからです。
子どもが牛乳を飲みすぎるデメリット
大人の場合は適切な牛乳の摂取量に注意できますが、子どもの場合は大人が管理しないと、過剰摂取になる可能性があります。ここでは、子どもが牛乳を過剰摂取する場合のデメリットについて詳しく解説します。
満腹になってしまう
牛乳に含まれる脂肪分は、満足感を得やすくなります。そのため、子どもに水分補給代わりとして牛乳を与えると、牛乳だけでお腹いっぱいになり、食事が食べられなくなる場合があります。
子どもは大人と違って、満腹になるとそれ以上は食べようとはしません。牛乳には子どもに必要な栄養素が多く含まれていますが、離乳後の子どもは牛乳だけでは十分な栄養を補えません。
特に注意が必要なのは、食前に牛乳を飲ませる場合です。一方で、牛乳を間食として取り入れると、食事への影響を抑えられます。
カルシウムの過剰摂取
牛乳には鉄分がほとんど含まれておらず、牛乳に含まれるカルシウムが鉄の吸収を阻害することがあるため、子どもが過剰摂取すると、貧血を引き起こすリスクがあります。大人の場合は食事から鉄分を摂取できていれば問題ありませんが、離乳中の子どもには特に注意が必要です。
乳幼児が、1日600ml以上の牛乳を3か月以上摂取したところ、離乳食の摂取量が少なくなり、結果的に鉄欠乏になった事例があります。そのため、子どもに牛乳を与えるときは、食事量が増える1歳以降が推奨されます。
栄養バランスの偏り
子どもが牛乳を飲み過ぎると、食事量が減り栄養が偏る可能性があります。牛乳はたんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンなどが含まれておりバランスの良い飲み物ですが、一部のビタミンは不足しているため、注意が必要です。
牛乳に少ないビタミンは、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンKです。ビタミンCは野菜や果物、ビタミンEは植物油や種実類、ビタミンKは葉野菜や納豆から補うことができます。
特にビタミンKは、カルシウムを骨に届けるため必要なビタミンです。子どもの骨や歯の成長に必要となるため、バランスの良い食事を心がけましょう。
また、牛乳はカルシウムの吸収を阻害する食物繊維がほとんど含まれていないことから、カルシウムの吸収率が高くなっています。しかし、牛乳を過剰摂取すると食事量が減って食物繊維が不足する可能性があるため、気をつけなければいけません。
アレルギー反応
消化器官が未発達な乳幼児が牛乳を飲み過ぎると、アレルギーを引き起こす可能性があります。牛乳に含まれるたんぱく質の一部がそのまま身体に取り込まれると、それに対する抗体ができてしまい、わずかな量でもアレルギー反応を起こすことがあるのです。
乳幼児が牛乳を飲んだ後に、皮膚のかゆみや発熱が見られる場合は、アレルギーに注意しましょう。穏やかな症状であれば大きな問題にはなりませんが、まれに強いアレルギー症状が起こるアナフィラキシーショックになることがあります。
子どもに牛乳を与えるときは、1歳未満の摂取を避けて、最初は少しずつ飲ませて様子を見ると良いでしょう。牛乳アレルギーがある子どもでも、消化器官の発達により、症状が軽減されることがほとんどです。
牛乳を飲むときの推奨量と注意点
子どもにも大人にも、牛乳は栄養補給に最適な飲み物です。しかし、どんな食品でも過剰摂取は良くないのと一緒で、牛乳も飲み過ぎを避けて、バランスの良い食事を心がけましょう。
適切な摂取量
牛乳は、1日に200~400mlが適量とされています。大人は1日1杯、中高生は1~2杯、小学生は1.5杯が目安になります。
小中学生で学校に給食がある場合は、家庭で牛乳を1杯加えるだけで十分です。朝食や夕食に1杯の牛乳をプラスするか、間食として牛乳を飲んでも良いでしょう。
大人も1日1杯が目安とされるため、家族みんなで牛乳を飲む時間を設ける方法もおすすめです。そのまま牛乳を飲むのが苦手な方は、コーヒーに入れてカフェオレにしたり、ホットミルクにしたりして楽しんでみてください。
バランスの取れた食生活
牛乳はカルシウムが含まれており、吸収率の高さから骨や歯の健康を支える飲み物として適しています。しかし、カルシウムは他のミネラルの影響を受けるため、バランスの良い食事を心がけましょう。
牛乳のカルシウムの吸収を高めるためには、ビタミンDが必要です。青魚やキノコ類に含まれるほか、日光を浴びると体内で生成されます。
また、肉類やインスタント食品が多い家庭は、リンの過剰摂取に注意してください。リンを過剰に摂取すると、カルシウムの吸収が阻害されます。
牛乳以外からカルシウムを摂取する場合は、骨ごと食べられる小魚、乳製品、大豆食品、野菜、海藻類などの食品がおすすめです。毎日の食事に複数の食材をバランス良く使うことで、栄養の偏りを抑えることができます。
(まとめ)牛乳を飲みすぎるデメリットはある?
体質や体調によっては下痢・腹痛を引き起こす可能性があるため、1日に200~400mlを目安に飲みましょう
牛乳は身体に良いからといって、飲み過ぎるのは禁物です。飲み過ぎると他の食品の摂取量が少なくなり、栄養バランスが乱れる原因になります。
つい牛乳を飲み過ぎてしまう方は、この記事で紹介した飲み過ぎるデメリットを確認してください。特に乳幼児の場合は注意が必要なため、大人が適切な摂取量を管理しましょう。