ぐったりしている、涙が出ない、高熱や下痢・嘔吐を伴う場合は医療機関を受診しましょう

赤ちゃんは大人よりも体内の水分割合が高く、体温調節機能が未熟なため、わずかな環境の変化でも水分不足に陥りやすい存在といえます。とくに夏の暑さや冬の乾燥、発熱や下痢といった体調不良は、短時間で脱水につながるリスクを高めます。
赤ちゃん自身は「喉が渇いた」と訴えられないため、保護者がサインを見逃さないことが何よりも大切です。この記事では、赤ちゃんが水分不足かどうかを見極めるサインや、日常でできる予防の工夫、受診を検討すべきケースについて詳しく解説します。
目次
なぜ赤ちゃんは水分不足になりやすい?
なぜ赤ちゃんは水分不足になりやすいのでしょうか。その理由を体の仕組みや体調不良との関係から見ていきましょう。
大人と異なる体内の水分バランス
赤ちゃんの体は大人よりも水分に大きく依存しているのが特徴です。新生児期では体重の約75%、1歳前後でも約65%が水分で構成されており、成人の約60%に比べてかなり高い割合となっています。つまり、少しの水分喪失でも体全体に大きな影響を及ぼすということです。
体重5kgの赤ちゃんの場合、わずか150〜200mLの水分が失われるだけで体調不良を引き起こすことがあるとされ、いかにデリケートかがわかります。
体温調節機能の未熟さと汗のかきやすさ
赤ちゃんは代謝が活発で熱を生みやすい一方、体温調節機能が未熟なため、大人のように効率的に体温を下げることができません。さらに体表面積が体重に比べて大きいため、外気の影響を受けやすく、体温が上がると大量の汗をかいて体から水分が奪われる傾向にあります。
夏場の外遊びやベビーカーでの移動中はもちろん、冬でも暖房のきいた乾燥した室内では呼吸や皮膚から水分が蒸発し、脱水を招きやすい状況が生まれます。
発熱・下痢・嘔吐など体調不良の影響
赤ちゃんが体調を崩したとき、水分不足は一気に進行します。発熱時は体温上昇によって体から水分が消費され、下痢や嘔吐があると水分とともに電解質も急速に失われていくのです。
特に乳児は自分で水分を摂ることができないため、看護者が意識して補給を行う必要があるでしょう。軽い体調不良でも油断せず、普段より意識的に水分摂取を心がけることが何より重要です。
見逃し厳禁!赤ちゃんの水分不足サイン
水分不足は突然重症化することもありますが、小さな変化を経て進行するものです。日々の生活で観察できるサインを知り、早く気づくことが大切になります。
尿やおむつの変化(回数・色・量)
おしっこは赤ちゃんの体調を映す「鏡」ともいえます。健康な状態では1日に6〜8回程度、色は薄いレモン色が理想的です。これが極端に減り、3回以下になっている場合は要注意です。
また、長時間おむつが乾いたままでいる、尿の色が濃く茶色に近い、においが強いといった変化は水分不足の可能性を示します。夜間の授乳があるにもかかわらず朝までおむつが濡れていない場合も、脱水のサインであることがあります。
おしっこの回数・色の目安
月齢 | 1日の平均おしっこ回数 | 色の目安 | 注意すべきサイン |
---|---|---|---|
新生児(0〜1か月) | 8〜10回 | 透明〜薄い黄色 | 回数が5回以下、濃い黄色や茶色 |
乳児(2〜6か月) | 6〜8回 | 薄いレモン色 | 半日以上おむつが濡れていない |
7〜12か月 | 5〜7回 | 薄い黄色 | においが強い、量が極端に少ない |
口や皮膚の乾燥、泣き声の弱さ
水分不足になると、まず口の中や皮膚に変化が現れます。赤ちゃんの舌や唇が乾いてひび割れている、口の中がネバネバしている場合は水分が不足している証拠です。
皮膚も同様で、健康なときはしっとりと柔らかいのに対し、脱水が始まるとカサつきが目立ちます。特にお腹や太ももを軽くつまんだときにすぐ戻らないときは要注意です。
また、泣き声が普段より小さく、長く続かない場合も体力や水分が不足していることを示すサインとなります。
機嫌や活気の変化
赤ちゃんの水分不足は、性格や日常の行動パターンにも影響を与えることがわかっています。
いつもは笑顔で遊んでいるのに機嫌が悪くぐずる時間が増える、寝つきが悪く夜泣きが多くなる、あるいは逆に異常に眠りがちで呼びかけに反応が鈍いなどの変化は脱水の初期サインかもしれません。
さらに遊びや授乳への関心が薄れる場合も、体がエネルギー不足に陥っている可能性が考えられます。こうした変化は「気のせいかな?」と思ってしまいがちですが、繰り返し観察して続いているときは注意が必要です。
体温や発汗の変化
赤ちゃんは水分不足になると体温が上がりやすくなる傾向があります。触れると普段より体が熱く感じられたり、逆に手足が冷たく感じたり、顔色が悪いといった循環の変化が出ることも少なくありません。
また、発汗の状態も重要な指標です。暑い環境にいるのに汗をほとんどかかない、あるいは異常に汗が多いなど、普段と違う汗のかき方は脱水や体温調節の乱れを示すサインと考えられます。
水分不足が進んだときの危険なサイン
軽度の水分不足なら家庭で対応できますが、進行すると命にかかわることもあります。危険なサインを見逃さず、早急な対応が求められます。
ぐったりして反応が鈍い
普段は抱っこをすると手足を動かしたり表情を変えたりする赤ちゃんが、ぐったりして反応が乏しい場合は危険な状態といえるでしょう。
呼びかけに対して視線が合わない、抱き上げても首や体がだらんとしているといった状態は、脱水がかなり進んでいるサインです。
この段階では自宅での対応を続けるのは危険であり、すぐに医療機関を受診する必要があります。
泣いても涙が出ない、目が落ちくぼむ
水分不足が一定以上進むと、泣いても涙が出なくなるというはっきりした変化が現れます。これは体内の水分が極端に減少していることを示す重要なサインです。
また、目が落ちくぼんで見える、頭頂部の大泉門がへこんでいるといった変化も典型的な症状といえるでしょう。
こうした外見の変化が見られたら、脱水症状はかなり進行していると考えられ、早急な医療的介入が必要な状況です。
高熱や下痢・嘔吐を伴う場合は要注意
発熱や消化器症状を伴うと、水分と同時に電解質も大量に失われていきます。これを補わないまま放置すると、血液の濃度が変化し、けいれんや意識障害に至る危険性も否定できません。
特に乳児は体重が軽いため、下痢や嘔吐を数回繰り返しただけでも急速に脱水が悪化する場合があります。症状が重なるときは「様子を見る」のではなく、ためらわずに小児科や救急を受診することが重要です。
皮膚や循環の異常にも注目
危険な段階では皮膚の色や血流にも変化が出てきます。皮膚を軽くつまんでもすぐに戻らない(皮膚ツルゴールの低下)、手足が冷たく全身の血色が悪いといった症状は、体内の水分不足によって循環が保てなくなっているサインです。
これは緊急対応が必要な状態であり、医療機関での点滴治療が不可欠な段階に達していると考えるべきでしょう。
進行の速さを理解する
赤ちゃんの脱水は「数日かけて進む」のではなく、体調不良があるときには数時間のうちに重症化する場合があることを理解しておきましょう。
大人なら喉の渇きを自覚して水を飲むことで補えますが、赤ちゃんは自分で訴えることができないため、保護者がサインに気づけるかどうかが生命線となるのです。
「少しおかしい」と感じたら、念のために医療機関へ相談することが安心につながります。
水分不足を防ぐための予防法

危険な状態になる前に、日常生活で水分不足を予防することが最も大切です。授乳や離乳食の工夫、季節ごとの対応を心がけていきましょう。
授乳・ミルクでこまめに水分補給
赤ちゃんには、母乳やミルクを通じて必要な水分と栄養を補給することが基本となります。暑い時期や発熱時は、授乳の回数を増やし、こまめな水分摂取を心がけると良いでしょう。
赤ちゃんの様子を見ながら適切なタイミングで水分を補給することが大切です。哺乳瓶を使用する場合は、清潔に保つなど衛生面に注意することも忘れないようにしましょう。
離乳食期に取り入れたい水分補給
離乳食が始まると、食事からも水分を摂る工夫ができるようになります。野菜スープやおかゆ、果物のすりおろしは自然な水分源となり、食べやすい形で摂取できるメリットがあります。
また、麦茶や湯冷ましを少量ずつ与えることで、水分補給のバリエーションを増やすことも可能です。ただし、糖分の多いジュースや塩分の強いスープは負担になるため控えるのが望ましいでしょう。
季節や環境に応じた工夫
夏場は室温を28度以下に保ち、直射日光を避けることが基本となります。外出時には日よけや帽子を活用し、30分〜1時間ごとに休憩をとって授乳や水水分補給を行いましょう。
冬は乾燥による水分喪失が多いため、加湿器を使ったり濡れタオルを部屋に置いたりなどして湿度を保つ工夫が必要です。
さらに外出時には水分補給に必要なアイテムを持ち歩くと安心です。例えば、哺乳瓶やストローマグ、麦茶や経口補水液を少量、保冷バッグやタオルなどを準備しておくと、急な体調変化にも対応しやすくなります。
医療機関の受診を検討すべきケース
家庭での対応でよいのか、すぐに受診すべきか、判断に迷うこともあるでしょう。ここでは、その判断の目安を整理します。
家庭で様子を見てよいケース
おしっこの回数がやや少ない、口が乾燥しているといった軽度のサインであれば、まず授乳や水分補給を増やして様子を見ることが可能です。数時間以内に改善が見られれば、急を要する状況ではないと考えられます。
軽度の症状であれば、こまめに水分を与えながら経過観察するのが適切な対応といえるでしょう。ただし、状態が改善しない、あるいは悪化する傾向にある場合は、自己判断を続けるのではなく、専門家の助言を求めることが賢明です。
早急に受診が必要な危険サイン
ぐったりして反応が鈍い、泣いても涙が出ない、高熱や下痢・嘔吐が続いているといった症状は危険信号と捉えるべきです。これらが見られるときは時間を置かず、小児科や救急外来を受診しましょう。
特に生後6か月未満の赤ちゃんは症状の進行が早いため、少しでも不安があれば医療機関に相談することをお勧めします。専門家の判断を仰ぐことで、適切な治療へとつなげられるのです。
赤ちゃんの水分不足、よくある疑問と回答
赤ちゃんの水分補給について、多くの保護者が疑問を抱えています。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1:赤ちゃんに水を与えてもいいのはいつから?
新生児〜生後5か月頃までは母乳やミルクだけで十分な水分が補えます。この時期に水を与える必要はなく、かえって胃に負担をかける可能性もあります。
離乳食が始まる生後5〜6か月以降であれば、少量の湯冷ましや麦茶を補助的に与えるのは問題ありません。月齢に合わせた適切な水分補給を心がけることが、赤ちゃんの健やかな成長につながります。
Q2:経口補水液は使っていい?
下痢や嘔吐、発熱時などで脱水のリスクが高いときには有効です。ただし常用は避け、与える際は月齢に合った量を小分けで与えるのが基本となります。
重症化が心配なときは医師の指示を仰ぎ、自己判断での使用は控えましょう。
Q3:麦茶と白湯はどちらがいい?
どちらも赤ちゃんに与えることができますが、状況や好みに応じて使い分けるのがおすすめです。麦茶はカフェインレスでミネラル補給にもつながるため、離乳食期に適しています。
白湯は消化への負担が少なく、体調が不安定なときにも与えやすい飲み物です。どちらも少量から始め、赤ちゃんの様子を見ながら量を調整していきましょう。
(まとめ)赤ちゃんの水分不足のサインとは?緊急度の判断ポイント
ぐったりしている、涙が出ない、高熱や下痢・嘔吐を伴う場合は医療機関を受診しましょう
赤ちゃんは体内水分量が多く、体温調節も未熟なため、水分不足に陥りやすい存在です。尿や皮膚の状態、機嫌や活気の変化といったサインを見逃さず、早めの水分補給を心がけることが何より重要です。
おしっこの回数がやや少ない、口が乾いているなどの軽度なサインであれば、授乳や食事でこまめに水分補給を増やしましょう。数時間以内に改善が見られれば、急を要する状況ではないと考えられます。
ただし、ぐったりしている、涙が出ない、高熱や下痢・嘔吐が続く場合は危険なサインです。このような場合は迷わず医療機関を受診してください。特に生後6か月未満の赤ちゃんは症状の進行が早いため、少しでも不安があれば小児科に相談してください。