2021-02-24
甘辛
日本のみならず、海外でも料理のテイクアウトの需要が高まっていると聞く。先日の新聞にイタリアからの情報として、日本のような彩り良く様々なおかずが盛られたお弁当に注目が集まっているとのこと。特にイタリアの方々には、焼鳥弁当が人気なのだとか。あの甘辛いタレは、外国、とりわけヨーロッパ圏では受け入れられないと思っていたけれど、味覚は国境をいとも簡単に超え、馴染んでしまうようだ。思い出したのが、2017年に初めて三浦海岸で開催された、ウインドサーフィンのワールドカップでの事。選手用のお弁当、何種類かある中で、多くの海外選手が手に取っていたのは、鶏肉の照り焼き弁当だった。パッケージにTeriyakiと英語表記はなかった。世界のトップ選手が挑む大舞台で、日本独特のコックリ甘辛な、どちらかと言うと庶民的な味が支えているとは、なかなか嬉しいものだった。甘辛で言えば、みたらし団子も「Mitarashi 」として、そのうち世界に広がるかしら?
2021-02-18
八分目
大好物の甘栗が半額になっていて、嬉々として大量に買ってしまった。普通の人であればきっと三日間は楽しめる量だと思うが、私は一人で一回分。この為に、夕食の時間と胃袋に余裕を持たせておく。しかし、いくら大好物とは言え、残り二割程になるとお腹がくちくなるのだが、結局タラタラと食べ続けてしまう。美味しかった!の満足感より、ただ量を食べた満腹感のみ。私は欲張りなのか、物事の止めどき、締めどきの判断力が弱い。冬に波乗りをしていて、気持ち良く一本のれたら上がろうと決めてからが、なかなか終われない。もう少し良い波が来たらとか、もうちょっと上手く乗れたらとか…、それで最後は、寒さと疲れでダラダラに終わってしまう。甘栗から波乗りへと話が飛躍したけれども、物事でも食べ物でも、ここいらで丁度良い、そんな八分目をわきまえられるようになりたい。
2021-02-10
愛の適正温度
最近お料理やお菓子のレシピ本の売行きがよいのだとか。私はいっとき、洋菓子作りにはまっていて、何冊か購入したのだが、腕は一向に上がらず、8割は失敗、上がるのは電気ガス水道料金ばかり。しかし、失敗から学ぶ事は多い。例えば、一昨年のバレンタインデーに作ったドライフルーツのチョコレートがけ。果物を乾かすところから始めたのだが、なかなか水分が抜けないのに痺れを切らし、暖房の前に暫く置いておいた。だいぶ水分が抜けてシナっとなったので、いよいよ溶かしたチョコレートに浸す。しかし、チョコレートはダラダラと垂れるばかりで、フルーツに上手くつかない。やはり生の果物からは難しいのか、乾燥が足りないのか? 後日、知人のシェフに聞いてみると、果物が熱いと固まらないよね、と当然の答え。バレンタインの格言。愛情は熱すぎるより、冷静なくらいが丁度良い。
2021-02-05
お味がよろしいようで
立川志らくさんの食にまつわるエッセイ、「志らくの食べまくら」を読む。公演で訪れた各地の美味しいもの、ではなく、辛い弟子時代に支えとなった味、憧れのアイドルとの思い出の料理、罰ゲームのような師匠との食事、志らくさん得意の一品など、落語のまくらを聞いているような軽快さで書かれている。無理難題を押し付けながらも、さりげなく弟子をいたわる立川談志師匠とのハワイの思い出には、日本人らしさ、師弟関係の妙が感じられた。思い出の味とは、舌に残っているようで、実は心の中で瞬間冷凍されているのではないかしら。冷凍庫の奥に忘れてしまっていたものを見つけた時、味よりも先に、それを食べた時の出来事や共にした人が浮かぶ事がある。溶けるまでの時間が長いほど、思い出も深いと言うものか。本の中には「ざっくりレシピ」と題してお得意の料理も紹介されています。