2026-03-30
辺境・近境
自分には秘境と言われる場所は無縁かと思うが、そう言った場所の話には興味がある。村上春樹著「辺境・近境』は著者と相棒のカメラマンが、時間と足を確保すれば私でも行けそうな所から、とても無事に帰れないだろう場所、まず一般人は行けない地域まで、深浅7箇所を巡った旅のエッセイ。まずはイースト・ハンプトン。有名な作家やセレブリティのセカンドハウスが多い、桁違いの旅話し。続いては、個人所有の無人島、山口県の烏島。旅慣れた村上さんですら一晩で音を上げてしまうサバイバル話し。次は、静寂を許さないメキシコならではの疲弊の大旅行。次に讃岐へのうどん紀行が入り、少しホッとする。ここではイラストレーターの安西水丸さんも同行してのうどん三昧。この後は、私には一番重く感じられたノモンハンへの長い旅となる。戦地であった傷跡、いやまだ傷そのもの、魂のカタマリが残るその場所で、村上さんは不思議な体験をされている。次のアメリカ大陸横断紀行では、さすがアメリカ、ラジオから流れる音楽にも国境があると知る。最後の地は村上さんの故郷、神戸。西宮から神戸の三宮まで時間をかけお一人で歩き、記憶の中の神戸と阪神大震災後の今の神戸を比較されていて、少し切ない。尚、この『辺境・近境』には写真編があり、同行されたカメラマン松村映三さんの写真がメインで、そちらにも目を通されると、それぞれの場所をよりリアルに感じられると思います。
2026-03-23
真っ赤な太陽
葉山マリーナ近くでイーゼルを立て風景を描いている人をたまに見かける。また、桜咲く鎌倉の公園で写生する小学生を目にする事もある。大人のお上手な絵よりも、子供達の色も形も自由奔放な風景画が面白い。ところで、子供が描く太陽は国によって色に違いが見られると聞いた事がある。日本の子供はたいがい赤い色なのに対して、他の国だと黄色とオレンジ色が多く、赤はあまり選ばず、中には白や青で太陽を描く子もいるのだとか。実際にその色に見えるのか、それともイメージなのか、心理的な要素の現れなのだろうか? 国の環境や政治情勢も要因になっている可能性を否定は出来ないと思う。戦禍で空や街に色が無ければ、太陽の色の捉え方も全く違うだろう。世界中の子供達がみな、明るい色で大きな太陽を描いて欲しいと願うのは、平和ボケした大人の身勝手だろうか?
2026-03-16
炙る
おむすびを作っていたある朝、海苔をガス台の火で炙り始めると、すぐに磯の香りがふわりと広がり、指には海苔が起き上がったかのようなシャキッパリッとした感覚が伝わってきた。長年、海苔はガスの火で炙ってから使うのが習慣になっているのだが、もしオール電化になったらどうするだろう?海苔に限らず、たたみいわしもだ。たたみいわしも食べる前にサッと火で炙っている。火が通るのが早いので、トースターだと直ぐに焦げてしまう。この先、日本の家庭の多くがオール電化になったとしたら、海苔やたたみいわしを火で炙る食文化は、消えてしまうのだろうか?これも時代の流れと言うものか…?嘗て、炭をおこし、竈で食事を拵えていた時代が、経済の発展と共にガスコンロに変わり始めた時、とまどいの声は上がったのだろうか?ガスの火で美味しいものが出来るはずがない!とか何とか…。と同時に、その変化の中で失われていった調理文化もあったのだろうか。ただ、どのような調理法になったとしても、海苔を炙った時の香ばしい香りやパリッとした食感を求める気持ちは、いつまでも残ってほしいなと願う昭和生まれの女です。
2026-03-05
相性良し悪し
タイやベトナムへ頻繁に旅行していろご夫婦がいる。さぞや辛い食べ物がお好きなのだろうと思っていたら、奥方は大好物だが、ご亭主は香辛料が苦手なのだと言う。そのため、滞在中はフライドチキンで有名なかの店でお腹を満たす日もあるのだとか。食は合わねど気候風土が体に合っているため、タイやベトナムへ何度も出かけるのだそう。また、仕事でもプライベートでも長年ハワイを訪れていた知人は、ハワイの全てをこよなく愛しながらも、滞在中なぜかずっと体の調子が悪い。ハワイの空気が合わない体質なのだと、自他共に認めている。幸せなのにブルー。もうお一人は、花の都パリ。その方には乾燥した空気が合うのか、パリにいる間は体の調子がすこぶる良い。しかし、悲しいことに食事が合わない、思考が合わない、だから心が晴れない。はたしてこれは、その国、その土地の神様との相性が、良いのか悪いのか…?